13 :鬼女日記 2009/02/10(火) 16:12:25 ID:jL1fIILM
学生の頃、T字路の突き当たりに位置する小さな一軒家を借りて住んでた。
大家は隣接した母屋に住んでいる一人暮らしのお婆さん。
独立した(とはいえ同じ市内に住む)息子さんが昔住んでた離れを貸していた。
小さな台所と風呂があり、小さな庭がついていて、
通りに面して、不相応なほど立派な門柱まであった。
ちょっといいワンルームと同じぐらいの家賃だったが、
大学での実験や酒を飲んだ帰りに遅くなるので、気兼ねなく暮らせて都合が良かった。

ある日、近くの店で飲んでいたら、消防車が数台、サイレンを鳴らして走って行った。
「あれ、俺のうちの方に行くよ」
などと冗談めかして言っていたのだけど。

しばらく飲んでいい感じに酔っぱらってから、勘定を済ませ家路につくと、
家に近付くにつれて、薬っぽい異様な匂いがする。
家の前まで来ると、消防車とやじ馬がいて、辺り一面に薬剤が撒かれている。
オロオロする大家を見付けて事情を聞く。俺の足も震えていた。
T字をノーブレーキで突っ込んだ車が門柱に激突して、
ガソリンが漏れたため、化学消防車が出動したのだという。
突っ込んだ車は既に取り除かれていたが、門柱は完全になぎ倒され、
弾き飛ばされた門扉が、庭の立派な松ノ木に突き刺さっていた。
松ノ木がなかったら、離れに命中していたでしょうね、と聞かされた。
帰宅がもうちょっと早かったら、巻き込まれていたのかもしれなかった。
「しばらくは門が無いから、夜は不用心だね」と大家に言われた。
この人はなんだかんだ言って落ち着いているな、と思った。